2014年4月2日水曜日

【第37回】ミステリーゲームの落とし穴

前回の問題解決したくなる題材の話に関連して、今回はミステリーという題材について話をしたいと思います。

ミステリー小説は小説のジャンルの中でも人気の高い分野です。売れている小説のランキングを見れば、かなりのタイトルをミステリーが占めています。
しかしながら、それらをゲームにしようとするときには注意が必要です。
それは、多くのミステリーゲームで行われている「プレイヤー=探偵役」というフォーマットが、はたしてミステリー小説のような楽しさを生むのか、という問題点なのです。

探偵ミステリー小説の代表であるシャーロック・ホームズを例にとりましょう。
ホームズはすばらしい推理力で次々と難事件を解決します。だとすれば、プレイヤーがホームズになりかわって問題解決したくあるような気もします。
でも、小説を読んでいるとき、みなさんはホームズの立場になって、真剣に謎を解き明かすことがメインの楽しみなのでしょうか。

もちろんそういう人もいると思いますが、実は
「自分がホームズになって謎を解き明かしたい」
のではなく、
「自分が思いもよらなかった視点で謎を解き明かすホームズの推理を聞きたい」
という人も多いのではないでしょうか。
多くの読者が求めているのは、謎を考えることではなく、あざやかな謎解きを聞いて驚いたり納得したりするということ。つまり、こういった読者の位置は実はホームズではなくワトソンに近いということになります。

となると、もしゲームでのプレイヤーの位置をホームズに置くとやっかいなことになります。
「自分が思いもよらなかった視点で謎を解き明かすホームズの推理を聞きたい」
ということは、ゲーム内では謎の意外性が優れていればいるほど「自分が思いもよらない」ので謎が解けないというジレンマに陥るのです。

小説の中ではあんなに颯爽としている名探偵が、自分がプレイするとたんに証拠も見つからず、ひらめきも起きず、あっちをウロウロ、こっちをウロウロ・・・
これでは探偵ミステリーに求めている爽快さなど期待できません。
(逆に言うと、成功しているミステリーゲームは多くの場合、何らかの形で上記の問題を突破しようというアプローチが感じられます)

以上のように、小説というフォーマットでは成功する題材でも、そのままゲームに持ち込もうとすると問題が起きることがあるのです。
人気のあるミステリー小説だからといって、「プレイヤー=探偵」と安易に考えず、プレイヤーが参加したくなるポイントをどこに置いて、そのシステムをどうすれば爽快感が損なわれないかを見極めた上で作らないと、ゲームとしては失敗してしまうのだということをよく理解しておいてください。

※次回更新は2014/04/04(金)の予定です!