2014年3月3日月曜日

【ヤナセコラム】教育とチュートリアル

ゲームデザイン研究者の簗瀬です。

前回に引き続き、教育という文字がタイトルに入っています。チュートリアルというのは元々個別指導を意味しており、ユーザーそれぞれに対してゲームの操作方法やルールを教える事を示しています。

チュートリアルというのは非常に重要です。何故なら、ゲームはある程度の要素の組み合わせによって面白さを作っています。する事が決まっており、必ずその通りに出来るのならそれは遊びではなく作業になってしまうので、様々な要素を投入する事によって少しずつ違った局面を作り、判断と実行を繰り返してもらいます。そして完全に正しい判断と実行が可能になった段階、もしくはその少し前に新しい要素を投入し、作業になる事を防ぎます。

この新しい要素を学習するうえで必要なのがチュートリアルです。
このチュートリアルはダイアログの文字によって為される事が多いですが、例えばレベルの構成、出て来る敵の順番などによってさりげなく学習を促進していることも多々あります。良く出来たチュートリアルほど目立たない、もしくはよく出来たデザインのルールとレベルにおいてチュートリアルは不要であると言えるでしょう。

さて、このチュートリアルに関する知見はなにもゲームだけに必要なわけではありません。例えばスマートフォンなど電子機器の操作や、駅の自動販売機、カーナビゲーションシステムなどおよそインタラクティブな操作が求められるデバイスやサービスなどに関して様々な局面で求められます。

細かい事例を挙げていくと、それだけで本が書けてしまうので、ごく基本的ないくつかの事だけ憶えておいて下さい。

・情報は必要な時に必要なものだけを出す

多くの情報を出すと憶えきれなくなりますし、忘れてしまいます。
必要と感じていない情報が頻繁に出て来ると、チュートリアルに対する注意も得られなくなってしまいます。何もかも保険として画面で説明する事は決して親切ではないのです。

・まず必要があり、その後に教える

前述したように、ユーザーに何かを教えるにはその情報を欲しいと思ってもらう必要があります。例えばゲームを起動し、最初の敵が自分を攻撃してきたら相手を倒したいと思うのが普通ですよね。始めた瞬間にコントローラーのボタン配置を出しても、その時に見て憶えてくれるユーザーは稀です。次点は、最初にボタン配置図の出し方を憶えてもらい、知りたいと思った時にいつでも参照してもらえるようにする事です。

・チュートリアルは設計の不備を覆せない

チュートリアルは、ゲームデザインやレベルデザインと一体で、作られたレベルに対して後からチュートリアルを付け足すと、ゲームの流れを止めてしまったり、ユーザーのストレスを増大させたりしてしまいます。優秀なゲームデザイナーはルールや操作を決める際に、どのようなプロセスでそれを教えていくか同時に考えるものです。


チュートリアルを学ぶには、既存のゲームでどのようにルールや操作を教えているのか学ぶのがいちばんです。ただし「良いチュートリアルは見えない」ので、振り返ってあれは良かったと感じる事が多いかも知れません。振り返ってみて、操作やルールに関するストレスを感じていないようだったら、最初からやり直して確かめたり、実況動画などを見てみるのが良いでしょう。